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宮城県の東北歴史博物館で開催されている特別展「世界遺産 大シルクロード展」に行ったので、感想を書いておこう。
まず、この特別展の名称が気に入らない。なぜ「世界遺産」とつけるのか。確かに、いわゆるシルクロードの一部は UNESCO 世界遺産リストに登録されている。しかし、それが何だというのか。いわゆるシルクロードの歴史的重要性や、それに関連する文物の文化的価値は、それ自体に存在するのであって、世界遺産として認定されることによって生じたものではない。歴史的遺産はそれ自体に価値があり美しいのであって、世界遺産だから尊いわけではない。すなわち、自立した精神と独立した知性の持ち主であるならば、「人類の貴重な文化的遺産である」という理由で特別展の文物を見学したいと思うことはあっても、「世界遺産である」という理由で特別展を訪れたいと思うことはない。特別展の名称に「世界遺産」とわざわざ付けるのは、それを訪れる人々の知性と精神に対する侮辱に他ならない。
次に、入口に掲げられていた挨拶文が気に入らない。挨拶文のパネルが三人分、掲示されており、よく覚えていないのだが、最初の二人は博物館の館長か誰かと、駐日中国大使か誰かであったと思う。館長は理解できるし、この特別展が中国の博物館に所蔵されている品々を借用して展示するものである以上、中国大使も妥当であろう。問題は三人目である。
なぜ、池田大作の挨拶文が掲示されているのか。確かに池田は、民間レベルでの日中友好に尽力した人物であり、今回の特別展の実現にも貢献したのであろう。しかし少なくとも形式的には、今回の展示の主催にも共催にも関係していない。そして池田は、特定の宗教勢力および政治勢力と深く結び付いた人物である。民間団体の催しであるならともかく、公的な博物館である東北歴史博物館の特別展であるならば、このような特別扱いには相当の理由がなければならない。
事情は理解できる。おそらく、この特別展の実現のために池田の助力が必要であったのだろうし、中国側や関連団体から、池田の挨拶文を掲示するよう強い要求もあったに違いない。それでも、それを正当化できるだけの根拠が、一体、どこにあったのか。
最後に、展示内容が気に入らない。「シルクロード展」と称しつつも、展示されているのは中国の文物だけである。正確にいえば、中国が自国と称している地域の文物だけである。西方からの影響を受けた中国の文化的遺物は展示されていても、中央アジアや西アジアから運ばれてきた歴史的遺物はごく僅かしか展示されていない。
そして何より、その「中国の文物」の大半はウイグルやチベットのものであった。いうまでもなく、ウイグルやチベットは、いわゆるシルクロードにおいて重要な交易拠点であった。しかし、なぜ、それが「中国の文物」として扱われているのか。いつ、ウイグルが中国になったのか。誰がチベットを中国と認めたのか。ウイグルもチベットも、現在は中国による占領下にある。そして現地の文化や言語を破壊し、いわゆる「漢化」が猛烈に推進されている。その文化破壊、民族浄化を、諸君は知らないというのか。
ウイグルの墓から「出土」した文物が、多数、陳列されていた。むろん、「出土」の経緯は記載されていない。誰が、どうやって、それを墓から取り出したのか。現地のウイグル人は、それを承諾したのか。
歴史遺物の展覧会を開催するために、現在起こっている社会的民族的宗教的問題に、目を瞑るのか。