これはhttp://mitochondrion.jp/に掲載している「医学日記」を 検索用に 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われます。 通して読むには、トップページからオリジナルページにアクセスしてください。


2024/04/23 不動産投資 (2)

結局のところ、不動産投資の是非は次のような簡単な計算で評価すればよい。

(一年あたりの収益期待値) = (期待される一年あたりの家賃収入) - (利息その他の必要経費)- (一年あたりの不動産価値の下落額)

なお、家賃収入は物件が古くなるにつれて安くなるであろうこと、空室リスクがあること、必要経費には経年劣化に伴う修繕費などの他に登記費用などの初期費用も含まれることに注意を要する。

投資を勧誘する業者は、この簡単な式で評価すると赤字になってしまうので、この式を必死に否定し、減価償却云々を持ち出して「書類上は赤字にするが、実際に支出するわけではない」などと詭弁を弄するのである。念のために説明しておくが、減価償却費というのは、資産の価値が年々低下していく分について「毎年、少しずつ損失を出している」として経理上処理する項目のことである。たとえば 1000 万円で買ったマンションを 25 年で償却するとすれば、毎年 40 万円支出している扱いにするのである。

仮に実際の市場価値の低下が年 30 万円であり、一方、家賃収入からローンの利息その他諸経費を除いた残りが年 30 万円であったとしよう。ふつうに考えれば、資産の減少分と収入が同額であるから、損得なし、ということになる。しかし市場価格の低下は客観的評価が難しいので、税務上は、これを減価償却費として取り扱う。前述のように減価償却費 40 万円を計上した場合、税務上は 30 万円の収入に対し 40 万円の損失を出しているのだから、マンション経営全体では 10 万円だけ「帳簿上の損失」が生じていることになる。つまり帳簿上、所得が 10 万円少なく評価される。仮に所得税率が 20% であるならば、毎年 2 万円だけ税金が安くなるので、確定申告することで、その分が還付される。これを利用して、勧誘業者は、不動産投資で利益が出るかのようにみせかけるのである。

むろん、これは正しくない。上述の例について、たとえば 10 年後に 700 万円でマンションを売却したとしよう。このとき、経理上は 600 万円の価値しかない物件を 700 万円で売却したのであるから、100 万円の所得があった、ということになる。所得税が 20% であるとすれば、20 万円の所得税が課されるので、先に得た毎年 2 万円の「得」は帳消しになる。むしろ、売却した年にまとまった収益があることで、累進課税の具合によっては、税率が上がって損になる恐れもある。

あたりまえのことだが、上述の式でキチンと利益が出るなら、そのようなビジネスを私や諸君に紹介するのではなく、彼ら自身が実践すればよいのである。あるいは、銀行は我々に貸し付けるのではなく、不動産部門の子会社で運用すればよいのである。それをしないということは、つまり、そういうことなのである。

繰り返しになるが、ローンを組んでまでマンション経営することの利点は「脱税がバレにくい」という点にしかない。


Home
Copyright (c) Francesco