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不動産投資の話をしておこう。世の中には、小金を持っていそうな相手に対して不動産投資をもちかける業者がいる。私のところにも、最近はようやく減ったが、以前は頻繁にそうした業者からの営業電話がかかってきた。私は実際には対した資産を持っていないのだが、医師ではあるから、その種の名簿屋から入手した情報に基づいて営業電話をかけてきたものと思われる。私は、そのような資産運用に全く興味がなかったのだが、一体、どういうビジネスモデルを彼らが提案するのかという点にだけは興味があったので、時間のあるときには彼らの営業トークにつきあっていた。念のために述べておくが、私は常に電話の冒頭で「興味ございません」と言って断わっている。断わっているにもかかわらず、彼らが強引に営業トークを展開するのである。つまり、私が悪戯で彼らの時間を浪費させているわけではない。
その種の不動産投資業者の勧誘内容は、だいたい共通しており、以下のような具合である。少ない頭金で、銀行のローンを活用し、基本的にはワンルームマンションを購入する。それを賃貸に出すことで家賃収入を得ることができ、それをローンの返済に当てる。家賃収入がローン返済額よりも月 2,000 円程度高いモデルを示す業者もいるが、たいていは、家賃収入よりはローン返済額のほうが高い。しかしマンション経営をすることで、ローンの利息や、マンションの減価償却費、その他経営に必要な経費を考慮することで書類上赤字にすれば、確定申告で税金の一部が戻ってくる。これにより正味では利益が出る、というような説明をする業者もいるが、そうではなく将来の年金のようなものとして考えていただきたい、というような説明をする業者もいる。
だいたい彼らの説明は曖昧で漠然としており、理解しがたい。法律や経済に詳しくない人のために後述するが、減価償却費やら何やらで「書類上赤字」になっているなら、実際に赤字になっているはずであって、全体として利益を得られるはずはない。マンション投資などせず、全額をを銀行に預けておく方がマシなはずなのである。だから彼らの説明は何かが嘘なのであるが、どこが嘘であるのかは、なかなか掴めなかった。そこで粘り強く、何回も彼らと話をして、ようやく、彼らの提示するビジネスモデルを理解することができた。
要するに脱税なのである。たとえば諸君が大阪にマンションを買ったとする。また、あるとき、たとえば京都や大阪に遊びに行ったとする。ここで、実際には単に遊びに行っただけであったとしても、 これを大阪の不動産業者との商談だったことにして、交通費を経費計上して確定申告するのである。むろん、本来であれば実際に商談していない交通費は経費として認められないのだが、税務署も忙しいから、そのような細かい点をイチイチ調べないらしい。そのようにして、細かな経費を計上すれば、もともと高額の所得税を納めている人の場合、「節税」することによって正味の利益を得ることができるのである。
このシステムをようやく理解した私は、電話をかけてきた業者に「実際には使っていない経費を、使ったことにして確定申告するのは、違法な脱税ですよね?」と非難した。すると、相手は「いえ、キチンと認められています。大丈夫です。」と強弁した。脱税をそそのかしておきながら、ずいぶんとフテブテしい奴である。そこで私は「私が税務署職員や検察官であったとしても、同じことを言うのですか」と問うてみた。すると、相手は「ええ、キチンと認められていますから」などと言う。私は「あ、言っちゃうんだ」と思わず漏らし、困惑した。そして相手は脱税が合法であると主張し続けるので、とうとう私は「それは違法であって、認められていませんからね!」と語気を強めた。すると、とうとう相手は「あ。。。じゃぁ、この話、やめましょうか。」と言ったので、「ええ、やめましょう」と言って電話を切った。