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米国で大統領選挙への立候補予定者が銃撃を受けた。犯行の目的は現時点で明らかではないが、思い込みによる報道が世界には充満している。
現時点で明らかなのは、銃を用いた殺人および殺人未遂事件があった、ということだけである。これを特定の政治的目的を達するための犯行である、と決めつける報道が目立つし、それを前提として「民主主義を脅かす蛮行」というような表現もみられる。しかし、もし、これが単なるトランプへの個人的な恨みによる犯行であるならば、その被害者がたまたま大統領選挙への立候補予定者であったというだけのことであり、民主主義云々とは別の話である。
日本でも二年ほど前に、内閣総理大臣経験者が街頭で射殺される事件があった。当時マスコミ等は、今回と同様に「民主主義に対する冒涜」というような表現を安易に用いた。結局、あの犯人の目的が何であったのかは確定していないが、どうも、政治的主張を実現する目的ではなく、安倍個人に対する恨みによる犯行であった、という解釈がもっともらしい。すなわち、安倍がいわゆる統一教会を支援しており、その統一教会のせいで家族がひどい目にあった、という理屈で安倍に対し怨嗟を募らせたわけである。むろん、彼の行なったことは殺人であり、犯罪であり、社会的に許容できないが、民主主義の破壊を試みたわけではない。
むしろ民主主義の破壊を試みたのは、安倍をはじめとする政府与党の方である。地元への利益誘導により票を実質的に買収し選挙を有利に進めるのは、かの政党が何十年も前から継続している手法である。また、近年ようやくマスコミでも問題視されるようになってきたが、いわゆるパーティー券や政治献金という形態で企業や個人から資金を募っているが、どうみても公然の賄賂である。合法ではあるが、民主主義の理念、理想を破壊する政治手法には違いあるまい。なお、こうした賄賂は大手野党も公然と募っている。この点において清潔な政治姿勢を示しているのは、日本共産党をはじめとする少数の弱小政党のみである。また、安倍はいわゆ「桜をみる会」や「森友・加計問題」をはじめとする汚職疑惑もあり、さらにそれを隠蔽する目的で公務員を自殺に追い込んだ疑いが強い。政府与党についていえば、政府に都合の良い人物を検事総長に据えるために、検察官の定年について恣意的な措置を図ったことも知られている。この検察官問題は、本来であれば単独で政府が揺らぐような大問題であるように思われるが、政府与党の裏金問題に比して注目を集めなかったのは、おそらく、日本の一般国民の民主主義に対する理解や関心が乏しい故であろう。なお、この検察官問題については朝日新聞記者等が当該検察官と賭け麻雀をしていたことが発覚して政府の陰謀は潰えたが、同時に、マスコミが「権力に対する監視」を謳いつつも実際には権力と癒着して情報の横流しを受けている、という問題が広く知られる契機にもなった。
ついでにいえば、昨今のウクライナ情勢に関係して、ロシアを「民主的ではない」と表現する人も少なくない。ロシア大統領はロシア国民による選挙によって選ばれているにもかかわらず、である。日本や米国が民主的であり、ロシアが民主的でない、という考えは、一体、どのような根拠に基づいているのだろうか。ロシアでは選挙の不正がまかり通っている、などという人もいるが、日本だって、上述のような公然かつ合法の収賄や、「一票の格差」問題、および認知症で施設入所している人の投票率が妙に高い問題など、選挙の不正を疑わざるをえない事例が多数、あるではないか。
民主主義を脅かしているのは、一体、誰なのか。考え方によっては、大統領候補予定者の殺害に失敗した犯人は、民主主義を守ろうとしたのだ、といえなくもない。あの犯人が殺人犯、殺人未遂犯であるというのは事実であるが、それをテロだの何だのというのは、個人の主観、好悪の問題であって、客観的事実ではない。意見と事実を混同してはならぬ。