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2025/08/24 計算機のベンチマーク (1)

私は自分の研究専用の計算機として、7 台の PC を研究室に設置している。このうち 1 台は事務作業用、もう 1 台は研究データ管理用のファイルサーバーであり、残る 5 台が計算用 PC である。今回、これらの計算用 PC の演算能力を評価・比較したので、記録しておく。まず、これらの計算機の概要を示す。

Hostname CPU GPU RAM
動作条件
Storage OS 運用開始 調達価格
Helsinki Ryzen 9 7945HX
16 コア
GeForce RTX 4060
8 GB
32 GB (16 GB x 2)
DDR5-4800
40-40-40-77
SSD 1 TB Linux 6.1.0
Debian 12.11
2024.05 24 万円
Muscat Ryzen 9 7845HX
12 コア
GeForce RTX 4060
8 GB
32 GB (16 GB x 2)
DDR5-5200
タイミング不明
SSD 1 TB Linux 6.1.0
Debian 12.11
2025.04 20 万円
(新品時)
Stockholm Ryzen 5 5500
6 コア
n/a 32 GB (16 GB x 2)
DDR4-2133
16-18-18-38
HDD 2 TB
HDD 10 TB
Linux 6.1.0
Debian 12.11
2025.06 11 万円
Venezia Ryzen 9 5900XT
16 コア
GeForce RTX 4060
8 GB
32 GB (16 GB x 2)
DDR4-2133
16-18-18-38
SSD 256 GB Linux 6.1.0
Debian 12.11
2025.06 15 万円
Hanoi Ryzen 9 9950X
16 コア
Radeon RX 9060 XT
16 GB
64 GB (32 GB x 2)
DDR5-6000 (EXPO)
30-40-40-96
HDD 2 TB
HDD 20 TB
Linux 6.1.0
Debian 12.11
2025.07 34 万円
Dublin Ryzen 7 9700X
8 コア
Radeon RX 9060 XT
16 GB
256 GB (64 GB x 4)
DDR5-3600
36-44-44-96
HDD 2 TB Linux 6.1.0
Debian 12.11
2025.08 34 万円

Helsinki は私が大学院に入学してから計算用に私費購入したラップトップ PC である。Ryzen 9 (16 コア), RTX 4060 搭載の ASUS ROG G713PV が 23 万円と安かったため購入した。メモリは 16 GB と心許なかったので 32 GB に換装した。この Helsinki は 2024 年度を通じて私の唯一の研究用計算機であったが、2025 年夏に Hanoi が登場したことで主力計算機の座を明け渡した。

Muscat は 2024 年春に計算用に 20 万円で購入した Ryzen 9 (12 コア), RTX 4060 搭載のラップトップ PC,ASUS TUF FA607PV である。ところが購入直後に 16 コアの Helsinki がセールで手に入ったため、未開封状態で妻に譲渡した。その後、2025 年度に入って Helsinki のみでは演算性能の不足が目立ってきたため、妻から再譲渡を受けて私の計算用 PC としてデビューした。

Stockholm は Helsinki や Muscat のストレージ不足を補う目的で自作したファイルサーバーである。今回の PC 群の中で唯一、私費ではなく研究費で購入した。当初は 10 万円以内に収めるつもりであったが、CPU にグラフィック機能がついていないことを見落としていたため追加でグラフィックボードを購入した。

Venezia は「今なら AM4 の構成で安く 1 台組めるのではないか?」と考えて追加した計算サーバーである。省スペースのために Mini ITX, ケースは Silverstone SUGO 16 で組んだキューブ型 PC である。CPU の Ryzen 9 5900XT に対し CPU クーラーは noctua NH-L9a-AM4 と小型構成であり、noctua の CPU compatibility list ではCooler cannot handle base clock となっているが、実際には問題なく冷却できている。

Hanoi 誕生の経緯はいささか複雑である。陸奥大学 (仮) では昨年度、JST SPRING を受給している博士課程大学院生向けの研究費として年間 34 万円の基本額に加え、最大で 100 万円以上の追加支援が行われた。私は、今年度の追加支援に計算用高性能 PC の購入費を申請するつもりであったので、支援の詳細が発表されるであろう夏を待っていた。ところが 6 月になって今年度の追加研究費は国際学会のための海外渡航支援しか行われないことが発表された。私は憤然とし、私費でのモンスター PC 構築を決断した。当初 Ryzen 9 9950X, Radeon RX 9060 XT 16 GB, メモリ 256 GB (64 GB x 4)で構築したのだが、メモリアクセスが遅すぎ、期待された性能を発揮できなかった。そこで AMD EXPO を発動したが、今度は起動すらできなくなった。やむなく 256 GB メモリを諦め、64 GB のメモリを購入し直して、Hanoi としてデビューした。

上述のような Hanoi デビューまでの混乱の結果、14.4 万円で購入した 256 GB 分の DDR5 メモリが余った。私は今年度中に 256 GB のメモリを必要とする大規模計算を行う計画なので、今のうちに、この 256 GB を搭載した PC を追加で組んでおくことにした。その結果、誕生したのが Dublin である。DDR5-3600 での動作になるため CPU 性能が過剰とならないよう、当初は Ryzen 5 9600X を搭載する予定であった。ところが私はうっかりドスパラで Ryzen 5 9600 を購入してしまった。9600 は 9600X に比してごく僅かに性能が劣る一方、価格は 1,000 円ほど安く、しかも CPU クーラーが附属するので経済的である。だが私は 9600X を購入したつもりだったので、CPU クーラーとして noctua NH-L9A-AM5 も購入してしまった。結果として CPU クーラーが無駄になるため、恐縮しつつ Ryzen 5 9600 は未開封で返品した。代わりに新しく Ryzen 5 9600X を購入してもよかったのだが、送料を負担しドスパラに面倒をかけてまで返品した上で ほとんど同等の品を買い直すのも悔しかったので、構成を変更して Ryzen 7 9700X を購入した。こうして、メモリ速度の割に CPU が過剰な Dublin が誕生した。設置場所の都合上、高さを低く抑えたかったので、ケースは Silverstone SG11 を採用した。

私は CPU については AMD 派である。PC 自作を始めた中学生の頃は Intel 派であったが、京都大学工学部在学中に Pentium 4 Prescott の異常発熱対策として水冷を導入したものの、ほどなくして温度センサの故障で警報が止まらなくなり、最終的にクロックダウン + 空冷で対応した。それ以来、Intel CPU は買っていない。GPU については NVIDIA は「シェアが大きすぎる」という理由で嫌いなのだが、深層学習ライブラリ PyTorch を CUDA で動かすために、当初はやむなく GeForce を購入していた。しかし Radeon + ROCm でも問題なく PyTorch できるらしい、という情報を入手したため、Hanoi 以降は Radeon に切り替えた。これで問題なく動作しているので、今後 GeForce を購入する予定はない。

次回、ベンチマークの内容と結果を記す。


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