これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
美しくありたい、というのは、程度の差こそあれ、老若男女を問わず誰しもが思うことだろう。しかしながら容姿容貌は一朝にして変わるものではないため、今より美しくなることは、なかなか、難しい。しかし美しさというものは、必ずしも容姿のみによって決まるものではない。むしろ、 立居振舞や些細な所作の良し悪しによって、美しさは多分に決定されるであろう。
立居振舞や作法といえば、小笠原流だの何だのというものもあるが、私のような庶民には、そのような厳かなものは馴染まない。その一方で、作法を紹介したビジネス書の類は、残念ながら胡散臭いものが多い。親しみやすくて信頼できる作法の教科書はないものかと思っていたら、7 年ほど前であっただろうか、林實氏の作法心得に出会った。
これは 1981 年に刊行された、ホテル学校のテキストであるという。その内容たるや微に入り細に穿つものであり、残念ながら私は、このテキストの教えのうちほんの一割も身につけることができなかった。しかしながら、非常に印象に残ったものがいくつかあるので、それを紹介しよう。ただし、私もこれらを完全には履行できておらず、しばしば、怠ってしまうものもある。
他にもあるが、とりあえずは、これだけにしておこう。なお、これは元来が西洋式ホテルを意識したものであるから、あくまで洋式の作法であり、和式の作法とは、いくぶん異なる点もあるだろう。その意味で、日本では、あまりこだわらなくて良いものも多いかもしれないが、少なくとも、海外では注意するべきであろう。
このような記述をみると「今どき、そこまで徹底しなくても良いのではないか、時代錯誤ではないか」と思われる方もあるだろう。しかし、そうではない。キチンとしている人はキチンとしているのであり、もしこれを時代錯誤だと思うのならば、それは、あなたの周囲には礼法に疎い人しかいない、というだけのことである。
上述の「無言」について、私は工学部二年生の頃、「漢文学基礎論」の講義を担当していた非常勤講師の先生から咎められたことがある。あるとき、私はトイレで用を足した後、たまたま、入口で先生とすれ違った。私は半ば無意識に、軽く会釈をした。すると先生は、「君、トイレで挨拶をしてはいかん」と、おっしゃったのである。それ以来、私はトイレで会話をせぬよう務めている。
なお、林實氏のテキストには、他に文書心得というものもある。こちらもたいへん参考になり、特に、改まった手紙を書く際に有用である。