これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/02/13 医学生

私は「医学生」という言葉が嫌いである。「医学生」とは、現代では医学部学生、さらに正確にいえば医学部医学科生のことをいう。同様に「薬学生」といえば薬学部生をいうが、たぶん、ふつうは六年制の薬剤師養成コースの学生のみを指し、四年制のいわゆる創薬系の学生は含まないのではないかと思う。「看護学生」も看護師養成コースの学生を指す言葉であり、こちらは大学生に限らず、いわゆる看護学校の学生全般を含むと思われる。医療系以外でも「法学生」という言葉があり、法学部生とほぼ同義であろう。

ところが、工学部学生のことを「工学生」と呼んだり、理学部学生を「理学生」と称することは稀である。なぜ、医療関係や法学だけが、こうした特別な呼称を持っているのだろうか。詳しく調べていないので妄想で書く。これらの学生が大学で学ぶことは、純粋に学問というよりも、職業訓練の色彩が強く、その点において工学部や理学部、文学部や経済学部などとは大きく異なる。そこで、一般の学生とは区別する意味で、慣習的に「医学生」などと呼ぶようになったのではないか。あるいは、医学部制度ができる前に「医学を学んでいる人」というような意味で使われていた「医学生」という言葉を、医学部制度ができた後にも引きずっているだけかもしれない。

歴史的経緯がどうであれ、単に「学生」とか「医学部生」とか言えば良いものを、わざわざ「医学生」などという専門用語で呼ぶところに、少なからず、いやらしさを感じる。医学部学生が何か特別な存在、エリートであるかのような錯覚を、しているのではないか。

同じような違和感は、部活動でも感じる。だいたいどこの大学でも、医学部には医学部内の部活動があり、たとえば「医学部水泳部」とか「医学部硬式野球部」とかいった具合で、基本的に医学部の学生だけで構成されている。また、正式名称は知らぬが、西医体という、西日本の医学部の体育系部活動の大会などもあるらしい。なぜ、医学部だけで独立した部活動を行う必要があるのか。これに対しては、医学部はカリキュラムが特殊で忙しいなどという反論があるようだが、それなら、活動を平日夕方以降や土日に限って、比較的、緩く活動する同好会のような活動を全学で行えば良いだけであり、組織として分離した医学部だけの部活動にする必要はない。医学部はキャンパスが他学部から離れている、との意見もあるが、それでは京都大学などのようにキャンパスが離れていない例について説明できない。また、逆に京都大学桂キャンパスのような、一部の学科が僻地に隔離されているにもかかわらず部活動は独立していない例を説明することもできない。

また、学生の自治活動についても、医学部は分離している。多くの大学では自治会があるが、それとは別の組織として医学部自治会というものがある例も多いらしい。全学連の他に医学連という組織もある。ただし、全学連や医学連は、そもそも政治闘争団体であるから、部活動などの分離主義とは事情が異なるかもしれない。医学連については、また後日、別の記事にまとめようと思う。

要するに、医学部は特別なのだ。エリートなのだ。他学部とは一線を画すのである。そういう、おかしな意識が根底にあるように思われる。


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