これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
臨床のセンセイ方の中には、病理組織像のことを「病理」と呼ぶ人が、少なからずいらっしゃるようである。確かに「病理組織像」などという表現は長々しいので、省略したくなるのが人情である。そこで頭の部分だけを取り出して「病理」と呼ぶのは、理解できる。
しかし、病理とは病の理であり、pathology のことである。すなわち「なぜ、そのような疾患や病態が生じるのか」という理論をいうのである。組織像に基づいて診断を下す、いわゆる病理診断は、病理学の一つの応用に過ぎず、病理学の本質ではない。画像そのものは病理でも何でもないのである。
そのことをふまえれば、病理組織像のことを「病理」と呼ぶのは不適切であるように思われる。漢字二文字に略すなら、むしろ「組織」と呼ぶべきではないか。