これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
半年ほど前に、論文代筆サービスについて書いた。研究データを送れば、論文の執筆から投稿まで代行してくれる、というサービスである。平たくいえば、論文のゴーストライターサービスである。
この種のゴーストライターが科学倫理的に問題であることは、言うまでもない。昨日紹介した ICMJE の recommendation から考えても、もちろん、不正にあたる。科学の世界においては、研究を実際に行った人が論文を書く、というのが鉄則なのであって、実際にやった人と文章を書いた人が違う、などというものは、科学論文として認められないのである。
法的にいえば、著作権法第 121 条には
著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
とある。この種のゴーストライターを利用しておきながら、まるで自分が書いた論文であるかのように発表することは、著作権法違反にあたる、ということである。
こうした、違法で学術倫理に反するサービスが公然と成立し、「トップジャーナル」の裏表紙に堂々と広告を掲載しているのが、臨床医学研究の現状なのである。こうしたサービスを利用する者は、同じデータであっても、文章の書き方次第で他人への伝わり方は大きく異なるということを理解していないのであろう。
研究するとは、どういうことなのか。それを医学科では教えていない。その一方で「研究マインドを持った医師の育成を云々」「基礎研究に進む医師の育成を云々」などと言っているのだから、滑稽である。基本を疎かにして形だけ整えたところで、医学が発展するわけが、ないではないか。