これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2020/06/17 男女差別について

胎盤形態異常の話を忘れたわけではないが、今日も医学ではなく差別の話をしよう。男女差別についてである。世の中には男女差別が広く蔓延している。誰の眼にも明白な事例は、ここでは敢えて挙げない。むしろ、一見、わかりにくいところに潜んでいる不当な男女差別を例示しよう。

たとえば一部の商業施設が「レディースデー」を設けて女性だけ割引することがあるが、これは不当な男女差別である。一見、女性を優遇しているかのようにみえるが、合理的根拠なく性別によって差別的取り扱いをすることで、間接的に女性に不利益を与えている。こういう男女差別が社会の中に根付いていれば、たとえば就職や入試で男性を優遇する、といった差別が行われやすくなるのである。

性犯罪の予防を目的として、鉄道に女性専用車を設けるのも不適切である。そもそも性犯罪は異性間で行われるとは限らない、という問題がある。そうでなくとも、加害者になりやすい者と被害者になりやすい者を分離することで犯罪を予防する、というのは、南アフリカ共和国でかつて行われていたアパルトヘイト政策そのものである。犯罪予防を目的として白人専用車と一般車とを設けることが不当な人種差別であることには、誰も異論はなかろう。それならば、どうして、女性専用車と一般車とを設けることが正当であると思うのだろうか。

学問の世界においても、極めて重大な男女差別が公然と行われている。大学の講義において、女子学生を「女の子」呼ばわりする一方、男子学生を「男の子」とは呼ばない教員がいる。女子学生を一人前の学生とは認めていないのである。医学科の場合、講義中のセクハラ発言も非常に多い。

学会発表や、あるいは研究指導の場において、女子学生に対しては批判が緩くなる者がいる。男子学生相手には厳しい質問を入れるのに、女子学生に対しては優しく簡単なことしか質問しないのである。女子学生を一人の研究者として認めていないのである。

選択的夫婦別姓制の導入について、同姓が強制されている現行制度では女性の負担が大きい、などと主張する人々がいるが、そういう人々も差別主義者である。どうして、現行制度で負担が大きいのが「改姓する人」ではなく「女性」だと思うのか。現行制度では女性が改姓するのが普通である、と思い込んだ上での不適切な主張である。

私の場合は一年半ほどまえに婚姻したのだが、その際に妻の姓に改姓した。特に妻や妻の親族から求められたわけではなく、私が改姓を希望し、妻の承諾を得た。世間では女性が改姓する例が多いから、敢えて男性である私の方が改姓したかったのである。

不思議なことが起こった。私が改姓した、と言うと、友人のうち何人かが「なぜですか」と問うたのである。私はニヤリとして、「君は差別主義者であるな」と返した。

そうではないか。女性が婚姻に伴って改姓しても、理由を問う人は滅多にいない。それなのに、どうして、男性が改姓すれば、そこに何か理由や事情があると思うのだろうか。民法では、夫婦はどちらかの姓を称さねばならない旨の規定はあるが、どちらが改姓するかは定められていない。女性が改姓するのが普通であるかのように思っている人は、男女平等とは何かをわかっていない。


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