これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2021/02/09 人権 (1)

半年近くも間隔があいてしまった。これは、私が精神的に疲弊しており、日記を書くだけの気力がなかったからである。誤解されては困るのだが、これは昨今の COVID-19 の流行とは何の関係もない。詳細は今は書けないのだが、いずれ、この日記で事情を説明するつもりである。

本日から何回かにわけて、人権について書く。これは、昨今の COVID-19 対策において、不適切な人権侵害が日本を含め世界的に行われていることを批判するためである。また、COVID-19 とは別の話として、以前から日本の医療現場では人権軽視の風潮があることも、併せて批判する。

医師の多くは、日本国憲法を識らない。日本の小学校や中学校・高等学校で、憲法や人権についてキチンと教えている学校は少ないと思われる。医学科の教育課程でもキチンと教えない大学が多いであろうし、わざわざ憲法学を自学自習する学生も少なかろう。日本という国家が、いかなる理念に基づいて運用されているのかを、彼らは知らないのである。その結果、自分の個人的な価値観に基づいて行動することになるのだが、大抵の医師は、高潔な倫理を備えているわけではないので、無意識に他人の人権を蹂躙してしまう。

日本においては、大日本帝国憲法の制定により人権の概念が法制化された。国立国会図書館のウェブサイトから引用すると、

第 22 条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス

第 23 条 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ

第 29 条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス

などとあるように、移動の自由、身体の自由、言論の自由、集会・結社の自由などが規定されていた。しかし、「法律ノ範囲内ニ於テ」「法律ニ依ルニ非ズシテ」とあるように、法律で定めれば、これらの自由はいくらでも制限することができた。さらに

第 31 条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ

とあり、非常時においては、これらの自由よりも「天皇大権」が優先されることになっていた。つまり、「国家事変」の場合に天皇が「集会を禁ずる」と命令すれば、法律の規定がなくとも、集会の自由は失われたのである。

1945 年に、日本は、負けた。連合国に対し無条件降伏したのである。その後、連合国最高司令部 (General Headquarters; GHQ) の指令の下、日本国憲法が制定された。この制定過程について、GHQ からの押しつけ憲法である、と批判し、「自主憲法の制定」を唱える勢力もいる。特に、日本政府が提出した「憲法改正要綱」を GHQ が否定し、それとは大きく異なる GHQ 草案に基づいて日本国憲法が定められたことを問題視する者は少なくない。彼らの主張にも一理はあるが、少なくとも形式的には、帝国憲法第 73 条が定める憲法改正の手続きに従い、日本国の憲法は、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わったのである。


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