これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
2001 年に米国で、民間航空機の同時多発ハイジャックが行われ、うち一機がニューヨークの高層ビルに激突する、という事件があった。同時多発テロ、という表現がされることもあるが、テロという言葉は定義が曖昧なので使わない方がよかろう。たとえばパレスチナの地で、イスラエルと称する武装集団が民間施設を砲撃・爆撃し、あるいは民家をブルドーザーで破壊しても、日本のマスコミは「テロ」という表現をしないようであるが、ニューヨークの事件とパレスチナの事件の間に本質的な違いがあるようには思われない。イスラエルは国家だから、と主張する人もいるようだが、それは日本政府が国家承認しているというだけの話であって、たとえばイランにとってはイスラエルは国家ではない。
この 2001 年の事件などに対する措置として、米軍はアフガニスタンに侵攻した。米国は、2001 年のニューヨークの事件はアルカイダというテロ集団によって引き起こされ、それをアフガニスタンのタリバーンが支援していたかのように主張したが、証拠は示されていない。当時のアフガニスタン政府は、米国に対し最後まで対話を求めていたが、それを拒絶して軍事行動を開始したのは米国側である。米軍はアフガニスタンの政府を崩壊させ、親米政権を樹立させた。アフガニスタンに駐留した米軍は、結婚式場を爆撃して参列者を殺害し、水を詰めたタンクを爆弾と誤認して民間人を殺害したが、日本や欧米のマスコミは、それほど大きく騒がなかった。アフガニスタン侵攻から 20 年が経って米軍が撤退するや否や、タリバーンが速やかにアフガニスタンの実権を握った。
いったい、アフガニスタンの米軍と、ウクライナのロシア軍との間に、いかなる違いがあるというのか。
第二次世界大戦の後、英国が主導してパレスチナの地にユダヤ人国家イスラエルの建国が宣言された。いうまでもなく、パレスチナには昔からアラブ人などが住んでおり、英国はこれを一時的に占領して植民地としていたに過ぎない。英国が本土の一部、たとえば南イングランドをユダヤ人に割譲してユダヤ国家を成立させるのであれば、それは英国人の自由であるが、そもそも英国人の土地ではないパレスチナに、どうしてユダヤ人国家が作られるのか。このイスラエル建国は国連決議に基づくものであるが、国連には国家の樹立や領土分割を決定する権限はないので、そもそも決議自体が不正であり道義にもとる。
イスラエルと称する人々は、米国などからの支援を受けて軍事力を増強し、周囲のアラブ諸国との間で四次にわたる中東戦争を戦った。その結果、当初の国連決議で認められた範囲を大幅に越える土地を占領したのである。これらの占領地にイスラエルは自国民を入植させ自国領としての既成事実を作り続けている。エルサレムも、戦争の結果としてイスラエルが占領しているだけの土地であって、国際的に承認されたイスラエル領ではないのだが、米国などはエルサレムをイスラエル領と認定している。イスラエルはもともと無人の地に国家を建設したわけではなく、そこにいた非ユダヤ人を排除することによって成立したユダヤ国家である。非ユダヤのパレスチナ人の犠牲の上に、イスラエルは存在するのである。
イスラエルが軍事力を背景に領土拡大を試みていることについて、米国は非難するどころか積極的に支持している。それならば、どうして、クリミア半島を占領したロシアが非難されなければならないのか。アラブ人の土地は奪っても構わないが、ヨーロッパ人の土地を占領することは許されないのか。
私は、ロシアを擁護しているわけではない。プーチンやロシアが邪悪であることに疑いの余地はない。しかしながら、イスラエルやアメリカもロシアと同様に非道である。パレスチナやアフガニスタンに無関心な人々が、ウクライナにだけは同情を向ける、その精神のありさまを問題にしているのである。
インドネシアでは、パレスチナ出身のフットボール選手が、ロシアによるウクライナ侵攻への抗議に加わることを拒否したという。