これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
3 箇月以上の間隔があいた。おそらく今年度中は、このような不定期更新になるであろう。このように日記の記載頻度が低下している事情について現在は書くことができないが、来年度には説明できると思う。
さて、COVID-19 に関連する話を何回かにわけて書く。
SARS-COV-2, いわゆる新型コロナウイルスに対するワクチンの有効性について、様々な情報が錯綜している。現在使用されているワクチンについては、臨床試験で有効性や安全性が確認されている、ということになっている。しかし、ほとんどの人は、その有効性や安全性について自分で理解したわけではなく、政府や専門家のエラい人がそういっているから、と盲信しているのではないか。
我々は独立した自由な人間であり、自分の生命身体社会生活について自分で決定する権利を有しているのだから、医療についても専門家から充分な情報提供を受けた上で各自が判断・決定すべきである。むろん、医学というのは高度に専門的な学問であるから素人がほんとうに医学的な意味で理解・納得したうえで医療を受けることは非現実的である。従って、専門家は素人にもわかるように平易な説明を行う必要があるし、大衆の側も、そうした説明を理解するために一定程度の基礎的な科学的素養を備えておくべきである。
ワクチンが SARS-COV-2 感染を減らす、というのは、たぶん事実である。しかし、それが COVID-19 の患者や重症者、あるいは死者をどれだけ減らすかは、評価が難しい。SARS-COV-2 は無症候性感染者が多いらしい、ということをふまえれば、現在臨床的に COVID-19 と判断されている患者のうち少なからぬ人は、別の原因による肺炎などに偶発的に SARS-COV-2 感染を合併したものであると推定される。すなわち、誤嚥性肺炎などによる死亡が、たまたま SARS-COV-2 感染を伴ったが故に COVID-19 による死亡と誤診されているのである。いうまでもなく、ワクチンには、こうした誤嚥性肺炎による死亡を防ぐ効果はない。従って、仮にワクチンが SARS-COV-2 への感染を大幅に減らすとしても、それによって真の COVID-19 患者や死者が年間何人程度減るのかは、よくわからないのである。このあたりの問題については 8 月 7 日の記事で述べているので、詳しいことは繰り返さない。キチンとした疫学調査を実施してこなかった国などの怠慢により、真相がわからなくなっているのが現状である。
ワクチンが実際にどれだけ感染を減らすか、という点についても、臨床試験のデータを鵜呑みにするわけにはいかない。我々が欲しているのは、現に流行している SARS-COV-2 に対して広く有効なワクチンであって、SARS-COV-2 の特定の株に対して有効なワクチンではない。たとえばウイルスのスパイク蛋白質を標的とする mRNA ワクチンであれば、そのスパイク蛋白質に変異が生じた株に対しては有効性が著しく低下する。換言すれば、これらのワクチンは、スパイク蛋白質に変異がない株に限定して有効なワクチンだということになる。そうした変異による有効性の低下は理論的に明らかなのだから、スパイク蛋白質が変異した株に対する有効性を臨床試験で調べることに意義はない。それにも関わらず臨床試験を行い、もし結果として変異株に対しても有効性が認められたならば、何かがおかしい。臨床試験のデータが偶然に都合が良い方向に偏ったのか、あるいは研究者の悪意または無知によりバイアスが加えられたかの、いずれかであろう。そうでなければ、免疫学の常識を覆す大発見をしたことになる。
一方、ワクチンの安全性についても、一部の自称専門家が「安全性が確認されている」などと主張している。彼らが言っているのは、接種直後や数ヶ月ないし一年程度の範囲においては重大な有害事象は稀である、というだけのことである。長期的な有害事象については不明なのに「安全である」などと述べるのは無責任である。実際、ワクチン接種による有害事象としての心筋炎が、稀ながら存在するらしい、ということは指摘されている。「ワクチンは安全」と主張している人々は、この心筋炎を、どう考えているのか。機序を何も考えずに「稀な現象だから問題ない」と言うのだろうか。おそらく、この心筋炎は 2 月 16 日の記事に書いたような機序によるものであろう。もしそうであるならば、長期的には、慢性心不全や慢性腎不全のリスクも上昇させる恐れがある。そうした可能性については基礎医学を修めた者であれば容易に想像できるはずであり、多くの生物学者や免疫学者が懸念しているであろう。一方、医師の多くは基礎医学を修めていない素人なので、そうした問題に想像が及ばないのは仕方のないことである。
それはさておき、専門家を称する人々は、本当に正確な情報を伝えて個々の国民に判断を委ねるつもりは、ないのではないか。「ワクチンは接種すべき」というのが、彼らの信じる「正しい情報」であって、そのために都合の良い情報を選択的に流しているのではないか。
「ワクチン接種の長期的な安全性は、現時点では誰にもわからない」というのが本当に正しい情報であろう。COVID-19 による死者数も、本当のところはよくわからない。従って、ワクチンを接種することの利益もリスクも、どちらも曖昧であるから、接種した方が良いのかしない方が良いのか、よくわからない、というのが現状であろう。その上で、接種するのか、接種しないのか、個々の国民が判断すべきものである。